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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第2章 「はじまりの目と、最強の教師」


は両手を握りしめたまま後ずさった。
制御できない力が暴走し、コンクリートの床にヒビが走る。



「! 抑えろ!」虎杖が叫ぶ。
「このままじゃ建物が崩れる!」伏黒の声が鋭く響く。



「止まって、お願い……!」



必死に両腕を押さえ込むように胸元で組むが、力は止まらない。


の足元からあふれる光片はさらに勢いを増し、花弁の嵐が吹き荒れる。
耳をつんざくような低い唸りが空間に響き、訓練場の梁が悲鳴を上げた。


(このままじゃ、みんなが危ないっ!……どうすれば――)


恐怖が脳を締めつけ、視界が滲む。


だがその瞬間、背後から影が差し、肩に手が置かれた。



「はい、そこまで」



五条の声が耳元で落ちる。


同時に、の体を包んでいた光の奔流がふっと霧散した。
花弁のような光片も消え、訓練場は嘘のように静まり返る。


張りつめていたものが一気に切れ、の足から力が抜けた。
膝が崩れ落ちかけた瞬間、五条の腕が支える。



「、大丈夫?」



耳元で五条の声がする。その落ち着いた調子に、わずかに呼吸が整う。



「!」

「ちょっと、何があったのよ!?」



虎杖と釘崎が駆け寄り、伏黒も黙って様子を見守る。
は震える指先を見下ろしながら、小さな声でこぼした。



「……ごめんなさい。こんなつもりじゃ……」



五条はしばらく何も言わず、そっと彼女の肩を支え直す。
目隠しの奥の視線が、彼女だけに向けられていた。



「謝ることじゃないよ」



穏やかな声が落ちる。
まるで、恐怖も戸惑いもそのまま受け止めるような響きだった。



「今は“自分の力を知る”だけでいい。……それで十分だから」



その言葉に、の胸の奥で少しだけ固く絡まっていた糸がほどけていくのを感じた。


そっと視線を上げ、五条を見つめる。
乾いた唇を動かし、震える声で絞り出す。



「……先生」



五条はに微笑みかけると、くるりと場を見渡しながら、いつもの調子に戻った。



「そんじゃ、今日はここまで! 撤収ー!」



その明るい声が響き、虎杖たちも一気に緊張を解いた。
訓練場には、ようやく日常の空気が戻ってきた。
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