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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第10章 「花は焔に、焔は星に」


けれど――




そこにいたのは、ではなかった。
ほんの少し背格好が似ていただけの、見知らぬ誰か。


五条は、そのまま視線を逸らし、踵を返す。


女性は一瞬、怪訝な表情を浮かべたが――
五条はもう背を向けていた。
彼女の反応など、視界にも入っていなかった。


(……もう、飛び立ったなんてこと――ないよな)


苦い予感が、喉の奥をひりつかせた。



ポケットの中でスマホが震える。
着信表示に、溜息混じりで応じる。



「今、取り込み中。後にしてくれる?」



怒気を孕んだ声で言い切り、切ろうとしたとき――



『五条さん! 切らないでください!』



通話口から、伊地知の焦った声が飛び込んでくる。



「……何だよ、伊地知。今――」

『さんが……』

「……が、何だって?」



わずかに足が止まる。
息をのむような間が落ちる。


そして、通話の向こうから、言葉が落とされた。








『……処刑が正式に決まりました。
明日の夕方、執行される予定です』






その瞬間――
まるで、空港全体から音が消えたかのようだった。


出発案内のアナウンスも、スーツケースの転がる音も、遠くの子供の笑い声すらも――


世界の全てが、静止した。


五条の耳には、自分の鼓動だけが響いていた。
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