第2章 “ちゃんと”した子
一ヶ月と数日前、木曜日。
「あ、銀!今日女バレの連中来るから、中間あたりネットで仕切るん手伝ってー」
「あれ、今日でしたっけ? 了解っス!」
そういや女バレが使っとる体育館、設備点検だか何だかで使えんって昨日連絡あったなーなんてこと考えながら、先輩と二人で体育館の中間を仕切るように緑色のネットを張っていく。
二年に進級して、クラス替えして、そんで噂で聞いた転校生の話。新入生と一緒に、どこの部活入るんやろ〜とか、女子だってよ!って色めき立つ男子らとか、まあ一時期二年生の間でちょっとした騒ぎになっていた。
同じクラスになった侑に「転校生、ちょっと見に行かん?」って誘ったけど「喧しブタが増えただけやろ興味ないわ」と一蹴されるし、「万が一ウチに来よったらすぐ追い出したる」なんて追い打ちもかけられて。そっち系の女子やないかもしれんのにな〜って思って。
まあ結局、杞憂に終わった。
転校生は、女子バレー部にマネージャーとして入部したらしい。
ちょっと拍子抜け。
五分五分で男バレのマネ希望やったりするんかな、って思ってたけど大ハズレ。まあ、宮兄弟に騒ぐ女子の数は全国で見たらほんのひと握りだし、誰も彼も双子狙いっちゅーわけでもないってことだ。
結局ゴールデンウィークが明けるまで転校生の女子を拝む機会もなく(まずどの子が転校生かわからんかったし)今日がやって来てしまった。
初拝みや!どんな子やろ!かわええ子やろか!?とちょっと期待しつつ、期待しすぎるのも失礼よなって落ち着こうとしたりして。
そわそわ、そわそわ。緑色のネットを張ったのち、先輩にニヤついとるのバレて笑われて、ちょっと恥ずかしくなった。
そしてついに、俺ら男子バレー部がいつも使っとる体育館に女子バレー部がやってきた。
女子マネのいない男だらけでむさ苦しい体育館に、花が咲くように女子たちの挨拶の声が響きわたる。
きた!
うっわ女バレの主将さんめっちゃかわええ!
なんか女子もみんなそわそわしとるのも新鮮や!
きっと胸が高鳴っていたのは俺だけじゃないはず。
だって女子だ。普段、教室くらいでしか関わることのない存在。
思わずニヤついてしまうのは俺だけじゃない、ほら、さっきの先輩も若干 耳赤いし!
今日だけ体育館の使えるスペースは少ないけど、もう半分を女子が使ってるって……なんかええよな!
