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【天は赤い河のほとり】短編集

第4章 ルサファ:01│雨が上がる時


【雨が上がる時】ドリームside
ルサファ:片想い│9(2/3)/9P┃6500文字
ドリノベ様再投稿用変加筆済
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「………あの日、おれは久しぶりに街に戻ってきて気が緩んでいた。元より分かっていたことだったんだが、遠征中に……その、失恋が明らかになり…ひとりになりたくなくて……」

声が、ルサファさんの声が震えている。

「しばらく眠れずにいたからつい深酒を……だがなかなか酔うことも眠ることもできずに酒がさらに深くなってしまったんだ。そんな時にきみが…」

「す、すみません。すごく付け込むようなことをしてしまって」

「いや、あの時は───普段から避けていたようなことに、おれは救われたんだろう」

彼の声が優しいものに変わった。無性に顔が見たくなって体を動かすと、なぜかそのまま抱きしめられる。

「あ、あの…」

「すまない…だが…あぁやはり、きみだ。とても落ち着く…」


(一体なにが起きているの?)

わたしに身を預けている彼は心地良さそうに瞳を閉じていた。そして語られた内容。

「我ながら現金だとは思うんだが………実はあの夜以来、謎の女性のことが頭から離れなくてまた眠れない日々を過ごしていたんだ」

「え、それは……えっと…」

「きみさえよければなんだか、こんなおれでよければ側にいてくれないか」

(─────────っ、な、な、な、な、)

わなわなとふるえて言葉が出ない。

(今なんて言った?え?聞き間違い?)


「だ、だって…ルサファさん…好きな人……」

言いたいことや聞きたいことはたくさんあるのに、言葉を選ぶ余裕もなくて、なんとか紡いだのはよりにもよって一番聞きたくない事柄。

「それはその……すごくムシのいい話になるのだが……きみと……『ドリームがいてくれるなら忘れられる』と思うから…」

「……ホントに?」

「すぐにはムリでも……なにより…おれはこの温もりを離したくないんだ」

「それってずるい……」

(ずるい人。でもその言葉をわたしはきっとずっと欲しかった。この人が欲しかった)
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