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【天は赤い河のほとり】短編集

第4章 ルサファ:01│雨が上がる時


【雨が上がる時】ドリームside
ルサファ:片想い│8/9P┃6500文字
ドリノベ様再投稿用変加筆済
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本格的に雨の季節が始まってからは戦争をすることなどはなくて、軍人のルサファさんもこの街にいるはずだ。

『いるはずだ』と言うのはあれからその姿をとんと見ていないから。

(ただ数日のことなのに。数日間姿を見かけないことなんて今までなら『よくあること』と気にも留めなかったのに。あの日、自分で否定したのに彼の姿が見えないだけでこんなに落ち着かなくなるなんて。………それでも気まずくなるよりはよっぽどいいよね)


「会いたいな………」とつぶやいて開店の準備をしてると音を立てて入り口の扉が開いた。


「お父さん?」

「いや…」

「え…あ、」

そこに立っていたのはお父さんじゃなくて、ルサファさん。おどろいたわたしは「いらっしゃいませ」とか的外れなことを口にしてしまう。

「ドリーム………少し話したいことがあるんだが、時間をもらえないか?」

(どうするのわたし。ルサファさんに会いたかったくせにこの展開はイヤだとか。でもどれだけ悩んでも迷っても結局、彼を拒むことなんてできないんじゃ……)



「………分かりました」

了承を小さく返事をすると明らかにホッとしてみせた。そんな心境を図れば、なんだかそれすらもかわいく思えるわたし。





後ろを歩いて連れられて来たのは、ルサファさんの部屋だった。

(さすがにそれは……)


あの日と同じ彼の部屋の匂い。

あの日と同じ……寝台。


瞬間的にあの日が記憶が甦って逃げ出したいのにわたしの足はまるで棒のように動かなくなってしまう。

なので『逃げることが叶わないなら』と、もうごまかすこともできずにずるずると壁を背に崩れ落ちていく。

恐らく勝負は部屋に入った一瞬だった。


(15/11/28→24/03/11)
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