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【天は赤い河のほとり】短編集

第4章 ルサファ:01│雨が上がる時


【雨が上がる時】ドリームside
ルサファ:片想い│6/9P┃6500文字
ドリノベ様再投稿用変加筆済
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「いらっしゃい」

夜になって店を訪れた彼が入ってきた瞬間に動悸が激しくなる。なんとか平静を装って普段通りに挨拶をするとバツが悪そうに口を開いた。

「あー、昨夜は飲み過ぎてすまなかった。恥ずかしい事に記憶が曖昧なんだが………店に迷惑はかけてはいないだろうか?」


どきっ、と鼓動が跳ねてしまう。口ごもるわたしには気づかずに父と彼が話している。


「あぁ大丈夫だよ。暴れたり、吐いたりなんてしなかったし、オカシイこともしなかった。あれだけ飲んであんなもんなら大人しい方さ」

「そうか、ならよかった………いや、実はどうやって帰ったかも分からないんだ」

その言葉に父がチラッとわたしを見たけれど、すぐに笑顔で「一人で帰って行ったよ」と続けてくれた。

(き、気まずい…でも…やっぱり覚えてない)

わたしはホッとしたような、残念なような複雑な気持ちになり、ひとりで苦笑いをこぼす。

(覚えていたらどうなっていたのかな…)

『ううん。きっとこれでよかった』と昨夜よりも顔色のいい彼を見て思った。忘れられない肌の熱さやまだ残る感触に、心がうずいてしまって切なさは増すのだけれど。

(15/11/28→24/03/11)
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