第5章 副隊長、好きです
お風呂から上がってきて、僕が塗ったると塗り薬を持った彼を見て、咄嗟に胸を隠して自分で塗ると手を伸ばす。
「嫌や、塗りたい。」
「あっ、副隊長!」
ひょいっと上へ躱され手を伸ばすが、ギリギリ届かない。
胸に手をついて背伸びをしたが彼も背伸びをしたので、距離は縮まらなかった。
腰に手を回され押さえつけながらグッと押しつけてくる。
顔を見ると、頬がぷくぅと膨れていた。
え、なんで?可愛い。
「名前で呼んでくれへんのか…僕、弄ばれとる…?」
何を言って…今、私を弄んでるのはあなたでしょ…。
「じゃあ、塗らない。」
塗り薬に伸ばしていた手をスっと引っ込め呟く。
「あかん!それはあかん!塗ってや!」
ギュッと手に握らされて、つい吹き出してしまう。
「なんで笑うん?」
「なんか…宗四郎の扱い慣れてきたなぁって思って…。」
「今、宗四郎言うた!やった!嬉しいわ、ありがとう!好きや!!」
なにこれ…胸がぽかぽかする…。
持たされた塗り薬を返して彼を見つめる。
そして何故か顔が近付いてきた。
薄く開かれた目が私に触れたいと言っている。
どうしよう…このままじゃ、キスされちゃう…。
気持ちを伝えられない私がもらっていいものじゃない…そう思うのに、止めることは出来なかった。
彼のキスはどんな味がするんだろう、知りたい…副隊長のことがもっと知りたい…。
目を閉じれば僅かに感じる、彼の唇の温かさ…。