第2章 副隊長、触らないでください
今日も訓練に勤しみ大浴場で汗や疲れを流した帰りの廊下。
「あ!凉おった!」
「げっ!副隊長、なんですか?」
もちろん副隊長としては彼を尊敬している。
だが、私を下の名前で呼ぶ時の彼はうざくてしょうがない。
「げってなんや!そろそろ靡いてくれてもええんちゃう?ほんまに好きやで、凉!」
違う、彼がうざいんじゃない。
うるさいのは私の心臓だ。
彼はここに来てから1ヶ月も経たずにこうして私を好きだと言うようになった。
きっと揶揄っているだけだ。
そう思っているのに…イケメンでいつもニコニコしていて明るくてムードメーカーのような彼に、絆されるのには時間はかからなかった。
「好きや!」
「わっ!?ちょ、やめてください!」
背中から腰に抱きつかれお腹を撫でられる。
最近ボディタッチが多くなった。
本当にくっつくのはやめて欲しい…私の心臓の音が彼に伝わってしまいそうだから…。
「ええやんかぁ、ほんまに好きやねんもん。」
「セクハラですよ…。」
何故私を好きになってくれたのかはわからない。
好きになるようなところもないはずなのに…。
そんなこと言わんでぇと顔を肩に擦り寄せてくる。
私を名前で呼ぶ時の彼の声はどんなスイーツよりも甘くて、私の耳を蕩けさせる。
お腹を撫でている手がだんだんと上に上がってきて胸を触ろうとしたので、すぐにその手を掴んで無理やり引き剥がした。
もう胸まで触ろうとしてきた…。
おやすみなさいと言って走って彼から逃げた。
なんであんなことしてくるの…揶揄ってるだけのくせに…。
もう帰ろう…このまま基地にいたら、また会ってしまう。
大浴場に入らずに先に帰ればよかった。
久しぶりに大浴場に入って疲れを癒そうと思ったのだが、これじゃあ余計疲れたよ。
そうだ、副隊長に伝えなきゃいけないことがあったんだった…。
また彼に会わなければいけないのかと思い頭を抱えた。