第2章 午後の来客
「ここに座っててね。すぐお茶いれるから!」
私はリビングのソファを指さし、
タオルのかかったテーブルをぱんぱんと軽くはたく。
ランダルはこくりとうなずいて、
白い靴下のまま、そっとソファへ腰を下ろした。
その仕草は、少し堅くて、緊張しているようにも見えた。
私はサンダルを脱いだまま、ぺたぺたと床を歩いてキッチンへ。
棚からティーバッグを取り出しながら、ふと独り言。
「えーっと、たしか……クッキーもあったはず……あっ、あったあった」
缶のふたを開けると、ふわっと甘い香りが立ち上る。
あの日と同じ、ちょっと焼きすぎた縁もそのままだ。
リビングの方からは、物音ひとつ聞こえなかった。
私は振り返らずに声をかける。
「紅茶でいいんだよね?砂糖は入れる?」
返ってきた声は小さかったけれど、ちゃんと聞こえた。
「……いれなくていい……」
その声に合わせるように、私は紅茶をポットに注ぎはじめる。
カップから湯気が立ちのぼり、部屋の空気がふんわりと和らいでいく。
リビングのソファに座るランダルが、視線のやり場に困っているようだった。
手は膝の上、背中はやたらとまっすぐ。
ちらりとこちらを見る目が、すぐに逸れる。
(なんだか……おもしろい)
私は口元にだけ笑みを浮かべて、クッキーを小皿に並べた。
ほんの少しだけ照れながら、うれしそうな顔をしてくれたらいいな――
そんなことを思いながら、私はトレーを持ってリビングへ戻った。