第2章 午後の来客
が体をぐっと伸ばしながら立ち上がった瞬間、
ふと、視界の端に――何か、鮮やかな色が映った。
(……ん?)
じりじりと照りつける太陽の光。
フェンスの向こう、庭の隅。
葉の影に、ぽつんと浮かぶようなオレンジ色。
――あれ?
思わず目を細めて見つめると、そこには、
フェンス越しにじっとこちらを見つめていた少年の姿。
オレンジ色の髪、制服姿。
あのとき、初めて出会った――
「……あっ、やあ!」
私の声が跳ねたように空気を切る。
ランダルは、ばちんと弾かれたみたいに目を見開いた。
「ええと、ランダル……だったかな?こないだぶりだね」
私はフェンスに近づいていき、片手で額に影を作りながら笑った。
「ちょうど今ね、お茶でも入れようと思ってたところだったの」
軽く肩をすくめるようにして、ほんのちょっとおどけてみせる。
「よかったらご一緒にいかがですか?って、誘っちゃってもいい?」
ランダルの顔が、みるみる赤くなった。
言葉は出てこないみたいで、
口だけが小さく開いたり閉じたりを繰り返している。
私はフェンスのすぐそばまで来て、首を傾げる。
「だめかな?」
その声は、軽やかに、あたたかく。
――少なくとも、相手がここまでぐらぐらに揺れているなんて、
本人はまったく気付いていなかった。
そのころ、庭の奥では。
ヤギのような何かが、まだずっと、草をむしっていた。
「もっ……もっ……もっ……」
ランダルは喉の奥で、かすれた音を漏らした。
そして、ぎこちなくうなずいた。