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おとなりさん【ランフレン夢】

第3章 ふたり、それぞれの午後


通りを抜けた先に、小さな広場があった。



四角く囲まれた花壇には、
手入れの行き届いた花が咲き並んでいる。



は、ふわりと足を止めた。



しゃがみ込むことはなかったけれど、
花壇に顔を近づけて、やさしくのぞき込む。



淡いピンク、鮮やかな黄色、涼しげな紫――
色とりどりの花たちに、
彼女はほんの少しだけ微笑んだ。



ランダルは、遠巻きにその様子を見ていた。



風が吹いて、の髪が揺れる。



まぶしい光の中で、彼女だけが特別に見えた。



(……きれいだ)



そう思った。
それは、目に映った花のことじゃない。



(……触れたい)



ほんの一歩。
手を伸ばせば、届くかもしれない。



そんな距離にいた。
でも、動けなかった。



このまま手を伸ばしたら、
彼女がどんな顔をするか、怖かった。



だから、ただ見つめるしかなかった。



指先がじん、と熱い。



喉が渇くような感覚。
胸の奥に、こわばるようなもどかしさが積もっていく。



(ボク……)



なんでこんなに、
苦しいんだろう。



彼女はまだ、無邪気な顔で花を見つめている。



その姿を、
ランダルは、焼きつけるように見ていた。
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