第2章 午後の来客
玄関を出ると、すぐ先にある門のところまで、二人並んで歩いた。
もう太陽は、屋根の向こうに隠れかけていた。
空は茜色にじわりと染まり、
風が低く吹いて、草をやさしく揺らしている。
サンダルと革靴が、同じ地面を踏みしめる。
音はほとんどなく、まるで時間だけが先に進んでいるようだった。
門の前で、ランダルが一度立ち止まった。
私は少し前へ出て、そっと声をかける。
「じゃあね、気をつけて帰ってね」
ランダルは小さくうなずき、そのまま通りへと歩き出した。
私は門の内側に立ったまま、
彼の後ろ姿をずっと見ていた。
ゆっくりとした歩幅。
背筋を伸ばして歩く姿。
夕暮れの光が、彼の輪郭をほんのり縁取っていた。
距離が少しずつ広がっていく。
そのまま家の角――アイボリー家の玄関へと向かって、
彼が曲がろうとした、その一瞬。
ランダルがふいに立ち止まり、振り返った。
夕焼けを背にしたまま、こちらをまっすぐ見る。
私の目と、彼の目が、しっかりと合った。
私は小さく手を振った。
ランダルも、少し迷うように、でも確かに手を振り返してくれた。
その距離は遠かったけれど――
風の音の中で、静かに交わしたような気がした。
次の瞬間、彼は角を曲がり、姿を消した。
私はしばらくその場に立ったまま、
扉を閉める音もしないまま、夕焼けの残り香のような空を見上げていた。