第2章 午後の来客
グラスをすすぎ終え、キッチンの布巾で静かに水気をぬぐう。
その合間にも、窓の外の光は確実に傾いていた。
私は手を拭きながら、リビングの方へ戻る。
ランダルはまだソファに座っていた。
じっとしたまま、外のほうを見ていたようだった。
私は少しだけ声の調子を落として、
けれど穏やかに声をかける。
「そろそろ、帰る?」
ランダルは一瞬、こちらを見て――それからまた、外をちらりと見た。
「……うん」
ほんのわずか、返事が遅れていた。
返した言葉の裏に、名残惜しさがにじんでいる気がした。
けれどそれを表に出すことはなく、
彼は静かにソファから腰を上げる。
座面がわずかに沈み、足元で小さく床がきしむ。
その仕草のひとつひとつが、なんとなく丁寧で、
名残を引くように見えたのは――きっと、気のせいじゃなかった。
私は玄関に向かって歩きながら、
その背中に、なにか言葉をかけようか少し迷っていた。