第2章 午後の来客
静かな時間が、少しだけ伸びた。
カップの中で溶けかけた氷が、ゆっくりと傾きながら音を立てた。
私はそっとグラスに手を伸ばす。
「片付けちゃうね」
ランダルは何も言わなかった。
けれど、そのまま動かずにこちらを見ていた。
私はグラスを二つまとめて持ち上げ、キッチンの方へ向かう。
窓の外から吹き込んできた風が、少しだけ強くなった気がした。
振り返ると、部屋の空気が夕方の色に染まりはじめていた。
床に落ちる影が長く、やわらかく伸びていて、
ランダルの顔も、その光の中で少しだけ霞んで見えた。
キッチンに立ちながら、水でグラスをすすぐ。
冷たさが、指先から腕へと静かに広がっていった。
洗いながら、私はぼんやりと思っていた。
(また来てくれるといいな)
それは、口に出すほどの思いではなかった。
けれど、今日みたいな空気がまた流れてきたら、
そのときは――もう少しだけ、長くいてほしいな、なんて。