第2章 午後の来客
しばらくのあいだ、返事はなかった。
私はカップの中の氷を見つめながら、
このまま流れてしまっても、それはそれでいいかと思っていた。
けれど、ぽつりと、ためらいがちに落ちた声があった。
「……たぶん、兄さんが用意してると思う」
ランダルの声だった。
低く、小さく――どこか、心底残念そうな響きが混じっていた。
私は目を上げた。
ランダルはグラスを見つめたまま、こちらを見ようとはしなかった。
指先で、結露のついたガラスをじっとなぞっている。
その仕草に、迷いと、ためらいと、少しの後悔が見えたような気がした。
「そっか、お兄さんがごはん作ってくれてるんだね。いいね、そういうの」
私はそう言って、ふっと笑った。
わざと明るく、何気なく、
できるだけ空気が重くならないように。
「じゃあまた今度、改めて誘うね」
ほんとうにそれだけ。
押しつけでも、遠慮でもなく――ただの、ごく自然な約束。
けれど、ランダルのグラスの中で、
氷がひとつ、かすかに鳴った。