第2章 午後の来客
風が吹き抜けた。
ランダルはそのまま動かずに立っていた。
首筋をなでる空気がひんやりしていて、
さっきまで張りついていた熱を、静かに剥がしていく。
耳に届くのは、木の葉の擦れる音と、遠くの鳥の声。
それらすべてが、柔らかい音楽のように感じられた。
呼吸が楽になる。
喉も胸も、さっきよりずっと軽かった。
少し汗ばんだ頬に、風が当たっていた。
私には、ランダルがようやく落ち着いたように見えた。
その横顔をちらりと見て、私は少しだけ笑みを浮かべた。
(やっぱり、ジャケットって暑そうだな……)
私はゆるいタンクトップにショートパンツ。
日向用のラフな格好だ。
きちんとした制服みたいなランダルの服じゃ、そりゃ暑いだろうなぁと、素直に思った。
「ねえ、ランダル。これ、アイスにしよっか?」
そう言って、テーブルのカップを見やった。
まだほんのり湯気の立つ紅茶。
けれど、この風と空気の中で口にするには、もう少し冷たいものの方が合っている気がした。
「ちょうどグラスもあるし、氷入れたらちょうどよさそう。
……冷たい方が、今はいいでしょ?」
ランダルは無言でこちらを見ていた。
返事を待つより早く、私はすでにキッチンに向かっていた。
氷の入った器を出して、カラン、と音を立てる。
風が部屋の奥まで流れて、カーテンがふわりと膨らむ。
背中に、彼の視線が乗っているような気配がしたけれど、私は気づかなかったふりをしていた。