第2章 午後の来客
「……ランダル?」
その声が、耳のすぐ近くで響いた。
ランダルははっとして、反射的に顔を上げる。
がこちらを見ていた。
不思議そうに、少しだけ心配そうに、
けれど変わらず、やさしい表情で。
「聞いてた?……ぼーっとしてた?」
まるで気にしてないように、ふんわりと笑う。
その無邪気な仕草に、ランダルの喉が、またごくりと鳴った。
うなずこうとして――
肩のあたりに、ぬるい湿気を感じた。
(……暑い)
気づけば、背中のシャツがじっとりとしている。
額にも、こめかみにも汗が浮かんでいた。
はそんな様子を見て、すぐに言った。
「……暑そう。ちょっと窓、開けよっか」
そう言って、彼女は窓辺に身を寄せる。
両手でロックを外し、ガラス戸を横にスライドさせた。
風が、ふわりと入り込んだ。
室内にこもっていた熱がすうっと引いていく。
「上着、脱ぐ?無理しなくていいよ」
その声に、ランダルは何も言えなかった。
返事をするかわりに、ただ、上着の裾に手をかけた。
第三者から見れば、それはただの季節の気温に対する反応にしか見えない。
けれど、その指先はどこか震えていた。
はそんなことに気づいていたのか、いなかったのか――
軽く微笑みながら、再び窓の外に目を向けていた。