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おとなりさん【ランフレン夢】

第2章 午後の来客


――なんで、そんなに普通でいられるんだろう。



ランダルはの横顔を、まばたきもせず見つめていた。
光に縁取られた輪郭が、目に痛いほど鮮やかだった。



指先で窓をなぞる。
声に抑揚がある。
肩が動き、髪が揺れる。
時折、笑っている。



それだけなのに、全部が――全部が、うるさくてたまらなかった。



「パラソルチョコに似てる」
「この時間の光がきれい」
「ここは特等席」



そんなことを話しながら、彼女は一度もこちらを見なかった。



それが息苦しかった。
無視されてるわけじゃないのに。



ちゃんと“隣にいる前提”で話してるのに、“見つめて”はくれない。



(もうちょっと、ボクのこと、見てくれればいいのに)



思った瞬間、自分で驚いた。



そんなつもりなかった。
ただ、お茶を飲んで、少し話して、帰るだけだった。



でも、いま目の前のは――
息をしているだけで、まぶしかった。



(こんなふうに笑うんだ)
(髪、やわらかそう)
(どんな匂い?)
(もっと近づいたら、どうなる?)



浮かぶもの全部が、いやらしいとか純粋とか、
そんな区別もなく混ざっていく。



喉が渇いていた。
さっきの紅茶ではまったく足りなかった。



(ボク、今――変な顔してない?)



ガラスに映る自分の顔に、目を細める。
目の奥が熱い。
顔が赤いのか白いのか、わからない。



「……」



声を出そうとして、唇がかすかに動いた。
でも、何も出てこなかった。



の手がまた窓へ伸びる。
なにげない動作なのに、焼き付くほどくっきりして見えた。



(触ってみたい)



はっきり、そう思った。



けれど、触れたら――壊れてしまいそうだった。
全部が、自分の手でぐしゃっと崩れる気がして、
指一本、動かせなかった。



(……怖いんだ)



欲しいのに、怖い。



怖いのに、欲しい。



こんな気持ち、知らなかった。
でも今、目の前にある。



それが、だった。
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