第2章 午後の来客
「……あっ、そうだ。ね、ちょっときてきて」
紅茶のカップをテーブルに戻しながら、はふと思い出したように立ち上がった。
ショートパンツのすそがひらりと揺れ、
ランダルの視界の端で、何かがふっと跳ねるように動いた。
「この窓から見えるの、午後になると光がすごくきれいでね……」
振り返ったが、楽しげに手招きする。
ランダルはほんの少しだけ目を見開いてから、ぎこちなく立ち上がった。
カーペットの感触を足裏に確かめながら、彼女のあとを追って歩き出す。
部屋の奥、大きな窓の前。
はレースのカーテンを指先でそっと持ち上げて、光を通した窓辺に立っていた。
午後の光はやわらかく、
その輪郭をやさしく縁取るように差し込んでいた。
「この窓からね、アイボリー家の屋根が見えるの。……ほら、あれ」
は指先で、すうっと空をなぞるように窓の外を指した。
ランダルも隣に立ち、視線をそちらに向ける。
斜めの角度から覗く、アイボリー家――自分の家の屋根が、
まるで絵のように、光の中に浮かんでいた。
「……あの形、私、ちょっと好きなんだよね。パラソルチョコみたいで」
は微笑みながらそう言って、
指先を軽く窓にあてるようにして、外を見つめ続けた。
「わたし、あれ、昔から好きだったの。
先っぽがちょっと尖ってて、チョコの模様もランダムでさ。
気まぐれな感じなのに、ちゃんと形になってるところがいいなって」
彼女の声はやさしくて、どこか遠くのことを思い出しているようだった。
ランダルは、ただその横顔を見ていた。
外の景色より、そこに立つ人の輪郭ばかりが目に映っていた。
彼女が指を動かすたびに、光が手元でちらちらと跳ねて、
それが不思議と、静かな焦りのようなものを胸の奥に残した。