第5章 ギルデロイ・ロックハート
「ただし!」
ロックハートが自信満々に胸を張る。
「私がここにいるかぎり、何ものも君たちに危害を加えることはないと思いたまえ! 落ち着いているよう、それだけをお願いしておきましょう!」
ハリーが机の本の山からそっと顔を出し、かごの中をのぞこうとした。
その仕草を見て、チユも思わず身を乗り出し――でもすぐにロンの袖を握りしめて引っ込んだ。
「だめ……ちょっと、怖いかも」と、呟く。
ディーンとシェーマスのふざけた顔からも、笑いが消えていた。
ネビルは前の席で机に縮こまり、すでに心がどこかへ逃げているようだった。
ロックハートが意味ありげな低い声で続けた。
「どうか、叫ばないようお願いしたい。連中を……挑発してしまうかもしれないのでね」
教室の空気がぴんと張りつめた。生徒たちは息を飲んで固まり、一瞬、時間が止まったような静寂が降りた。
そして――
「さあ、どうだ!」
ロックハートが大仰に布を引きはがした。
中から飛び出したのは――
「……え?」
チユは思わず、肩をすくめて身を引いた。
けれど、そこにいたのは……期待していたような(もしくは覚悟していたような)怪物ではなかった。
かごの中でバタバタと飛び跳ねていたのは、体の小さな、妖精のような生き物たち。
ぼさぼさの髪に、悪意のこもった目。
いくつかは牙をむき、奇声をあげながら暴れている。
「ピクシー!」ハーマイオニーが叫んだ。
「そう、コーンウォールのピクシーですよ!」とロックハートが自慢げに言った。「さあ、みんな、どう対応するか見せてごらんなさい!」
その言葉と同時に、かごの中のピクシーたちが――一斉に飛び上がった。
ピクシーたちは、まるで解き放たれた悪戯の塊だった。
小さな体が教室のあちこちを飛び回り、天井を旋回しながら生徒の頭をつつき、ローブを引っ張り、カバンの中身をぶちまけ、まるで混沌の渦が巻き起こったかのよう。