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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第5章 ギルデロイ・ロックハート



「ただし!」

ロックハートが自信満々に胸を張る。


「私がここにいるかぎり、何ものも君たちに危害を加えることはないと思いたまえ! 落ち着いているよう、それだけをお願いしておきましょう!」


ハリーが机の本の山からそっと顔を出し、かごの中をのぞこうとした。


その仕草を見て、チユも思わず身を乗り出し――でもすぐにロンの袖を握りしめて引っ込んだ。


「だめ……ちょっと、怖いかも」と、呟く。


ディーンとシェーマスのふざけた顔からも、笑いが消えていた。
ネビルは前の席で机に縮こまり、すでに心がどこかへ逃げているようだった。

ロックハートが意味ありげな低い声で続けた。


「どうか、叫ばないようお願いしたい。連中を……挑発してしまうかもしれないのでね」


教室の空気がぴんと張りつめた。生徒たちは息を飲んで固まり、一瞬、時間が止まったような静寂が降りた。


そして――


「さあ、どうだ!」


ロックハートが大仰に布を引きはがした。


中から飛び出したのは――


「……え?」


チユは思わず、肩をすくめて身を引いた。
けれど、そこにいたのは……期待していたような(もしくは覚悟していたような)怪物ではなかった。

かごの中でバタバタと飛び跳ねていたのは、体の小さな、妖精のような生き物たち。
ぼさぼさの髪に、悪意のこもった目。
いくつかは牙をむき、奇声をあげながら暴れている。


「ピクシー!」ハーマイオニーが叫んだ。


「そう、コーンウォールのピクシーですよ!」とロックハートが自慢げに言った。「さあ、みんな、どう対応するか見せてごらんなさい!」


その言葉と同時に、かごの中のピクシーたちが――一斉に飛び上がった。


ピクシーたちは、まるで解き放たれた悪戯の塊だった。


小さな体が教室のあちこちを飛び回り、天井を旋回しながら生徒の頭をつつき、ローブを引っ張り、カバンの中身をぶちまけ、まるで混沌の渦が巻き起こったかのよう。
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