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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第15章 秘密の部屋



紙片の下部に、見覚えのある几帳面な文字で、たった一言だけ書かれていた。

「パイプ」


ハリーが息をひそめる。
「これだ……これが答えだ。『秘密の部屋』の怪物は――バジリスクだ。巨大な毒蛇なんだ!」



チユは喉が詰まり、声にならない声を漏らした。
――毒蛇。ぞわりと鳥肌が立つ。

羽を持つ自分にとって、それは本能が嫌悪する存在だった。



「だから僕には聞こえたんだ。他の誰にも聞こえなくて、僕だけに……僕が蛇語を理解できるからだ」
ハリーは必死に繋ぎ合わせるように言葉を吐き出していく。


「バジリスクは視線で人を殺す。だけど――誰も死んでない。それは、誰も直接目を見ていなかったからだ!コリンはカメラを通して見た。フィルムは焼き切られたけど、彼は石になっただけ。ジャスティンは……ほとんど首無しニック越しに!ニックは光線を浴びても死ねなかった。2回は死ねないから……」


「……じゃあ、ハーマイオニーとあのレイブンクローの監督生は?」
ロンの声はかすれている。



チユは紙片を見下ろし、震える指で文字をなぞった。
「きっと、ハーマイオニーは気づいてたんだよ。だから……鏡を持って歩いてたんだ」


「そうだ!」ハリーが大きくうなずいた。
「そして、角を曲がるときにまず鏡で確認するようにって、誰かに忠告したんだ。そしたらその学生が……」


ロンは口をポカンと開けたまま。
「そ、それじゃあ……ミセス・ノリスはどうなんだ?」


ハリーは眉をひそめ、ハロウィンの夜を思い出すように目を閉じた。
「水だ……あのとき、マートルのトイレから水が溢れてた。ミセス・ノリスは、水に映ったバジリスクを見ただけなんだ」


――水面に映るだけで石にしてしまう存在。そんなものが、この城の壁の中をうごめいているなんて。
誰もその姿を直接見ていなかったのが、奇跡の様だ。


ハリーはもう一度、紙片を凝視した。

「『雄鶏の鳴き声は致命的』……そうだ、ハグリッドの雄鶏が殺された! 『継承者』はそれを恐れたんだ! クモたちが逃げ出したのも……全部つながる!」

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