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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第14章 アラゴグ



「でも、今追いかけるわけにはいかないよ……」
アーニーもハンナも聞き耳を立てていたので、ロンは声をひそめる。


ハリーはクモが消えていく方向を凝視した。
「どうやら……『禁じられた森』のほうに向かってる」


ロンの顔色はさらに悪くなり、情けないほど青ざめていた。
チユはそっと彼の袖をつかんで囁いた。
「……ハーマイオニーのために、わたしたちがやらなくちゃ」


授業が終わると、スプラウト先生が生徒たちをまとめ『闇の魔術に対する防衛術』のクラスへと引率した。
ハリーとロン、そしてチユはわざとみんなから少し遅れて歩く。


「もう一度、透明マントを使わなくちゃ」
ハリーが小声で言う。


「ファングも連れていこう。いつもハグリッドと森に入ってたから、役に立つかもしれない」


「……いいよ」
ロンは杖を指でくるくる回しながら落ち着かない様子だ。


「えーと……ほら……あの森には、狼男がいるんじゃなかったかな?」
必死に冗談めかすロンの声は、わずかに上ずっていた。


チユは小さく笑ってみせる。
「狼男より、スネイプの理不尽のほうが危ないと思うけど?」


ロンは苦笑し、少しだけ肩の力を抜いた。


「そこには、いい生き物もいるんだ」
ハリーが続ける。
「ケンタウルスとか、ユニコーンとか」


チユは、森の奥深くに潜む気配を想像して身震いした。
(だけど……もう逃げられない)

そんな彼女の思いをよそに、教室に入ると、ロックハートがうきうきと現れた。
深刻な顔をしている他の先生たちとは正反対で、陽気そのものだった。


「さぁ、みなさん!恐怖心を吹き飛ばすのは、正しい笑顔と輝かしい自信ですよ!」


場違いな明るさに、教室中が唖然とした。
チユは思わず、机の下で小さくため息をついた。

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