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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第7章 死者たちの晩餐会



「見て、食べ物だよ」
ロンが声を上げた。


地下牢の反対側。そこには長いテーブルが一列に並び、黒いビロードの布がかけられていた。


4人は興味をそそられて近づいた。
けれど――次の瞬間、チユは立ちすくむ。


――ひどい、におい。


吐き気がこみ上げてくる。
しゃれた銀の盆に盛られた魚は、すでに腐って形が崩れており、山盛りのケーキは真っ黒に焦げ、ハギスの巨大な塊には、ウジがびっしりとうごめいていた。


「や、やだ……」
チユは思わず後ずさる。マントの裾が足に絡まった。


チーズは厚切りで、全体がもこもことした緑のカビに覆われていた。
そして、一段と高く設置された台の上には、灰色の墓石の形をした巨大なケーキ。
表面には、コールタールのような黒いもので、べたべたと文字が書かれている。


『ニコラス・ド・ミムジー=ポーピントン卿
1492年10月31日 没』


まるで誰かの死を、そのままテーブルに飾ったみたいだった。
どんなに空腹でも、この食卓の前で食べようなんて気持ちにはなれそうになかった。


すると、ふと動きが目に入った。
恰幅のよいゴーストが、ふわふわとテーブルに近づいてきたかと思うと、そのまますうっと身をかがめて、テーブルを通り抜け始めた。
青白く輝く顔が、異臭を放つ鮭の中をゆっくりと通り抜けていく――。


チユは息を止め、思わずハリーの袖をつかんだ。
ハリーもまた、目を見開いたままその様子をまじまじと見つめていた。


「……食べ物を通り抜けると、味がわかるの?」
ハリーが恐る恐る尋ねると、そのゴーストはほんの少し立ち止まり、悲しげに首をかしげて言った。

「まあね……」

そしてまた、ふわりと漂いながら遠ざかっていった。


「つまり、より強い風味をつけるために腐らせたんだと思うわ」
ハーマイオニーが得意げに言う。鼻をつまんで、なんと腐ったハギスに顔を近づける。


「や、やめなよ!」
チユは小さくうめいた。ロンも、顔をしかめながらぶっきらぼうに言った。


「行こうよ。気分が悪くなる」


4人が方向を変えようとしたその時だった。
テーブルの下から、突如として何かが“ひゅっ”と跳ねるように飛び出した。


チユは小さく「きゃっ」と声を上げて一歩後ずさる。
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