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anxiety

第1章 1



──23:32

私は入口に近い席に座り、背もたれに思い切り体を預けた。

「…間に合ったぁ…」

どうにか間に合った終電の私が乗った2両目には、私以外に高校生らしいカップルが1組と、私と同じように残業の帰りに見える中年の男性が一人。

「…田舎なんだなぁ、やっぱり」

だって東京ではこの時間だって、人で溢れているのに。

「………」

───考えないようにしていたことを、自分から掘り起こしてしまった。

……私は、まだ、マネージャーでいられているのかな?
『Janne Da Arc』という、5人のアーティストの…。

気が付けば1ヶ月半も経っていた。
最後にマネージャーとして、5人に会ってから。

1ヶ月半……、長いよね。

もし……この次、上京したときに、「もう、いらない」って言われたら……?

「──っ」

私は暗い外を見ながら、ギュッと唇を噛んだ。


──23:43

『目的地付近です』というナビの声にハッとした。
無意識の内に、彩夏のアパートの近くまで来とったみたいや。

「…あれや」

申し訳程度に立っている街灯の光に照らし出されたアパート名を見て、俺はホッと息をついた。
空いている駐車場を借りることにして、上手く駐車した俺は車のエンジンを切った。
忘れずにケーキの箱を持って、俺は彩夏の部屋のある2階へと上がる。

──2階の、一番奥の部屋。
部屋の明かりは、ついていない。

「何や…まだ帰っとらんのか……」

いや、もしかしたら今日は早く帰ってきて、既に寝とるんかもしらん。
そう考えて、ベルを押そうとした手を一度止めた。

「………」

俺は腕にしていた時計を見た。
──23時50分。
西條は、『帰るのが0時過ぎになってる』って言うとった。

「………もう少しだけ、待ってみるか」
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