第7章 らっとまんはんと
暗闇の中、しばらくのあいだ、何も起こらなかった。
ただ、静けさだけが、ふたりを包んでいた。
毛布の奥で触れている肌と肌は、
呼吸に合わせて、ゆっくりと上下していた。
ランダルの手が、どこかに触れている。
腰のあたりか、肩か、はっきりとはわからない。
でも、そこにあることだけは確かだった。
わずかに曲がった指先が、時折、小さく震えている。
誰も何も言わないまま、夜がゆっくりと深くなっていく。
棺のふたが閉じられてから、どれくらいの時間が経っただろう。
外の空気の気配は、もうどこにもなかった。
温度も、音も、すべてがふたりのもので。
ここには、ほかの誰もいなかった。
閉じられた小さな箱の中、
溶けるように重なった体温だけが、ずっとそこにあった。
世界のふちが、ゆっくりと、にじんでいく。