第14章 ■短編 アイボリー家、雪上大作戦
冬。
雪。
それはカナダという国において、
もはや天からの祝福であり、災厄であり、
すべてを覆い隠す白い圧政である。
──そして、アイボリー家。
この小さな狂気の館においても、
冬は例外ではなかった。
私はというと、
ふわふわのブランケットにぐるぐると巻かれ、
ソファに小さく沈み込んでいた。
鼻の奥がずるずると痛み、
頭もほんのりぼんやりしている。
どうやら、風邪をひいたらしい。
「無理に動かなくていい。」
ルーサーが隣に座り、
穏やかに言った。
彼の手には、
白い湯気の立つカップ──
どうやら温かいハーブティーのようだ。
そっと、それを私の手元に置いてくれる。
(ありがとう。)
小さく口を動かして、そう伝えた。
ルーサーはわずかに頷いた。
そんな中──
「雪だー!!」
ランダルの元気な叫び声が、
玄関ホールから響いた。
バサァッ。
玄関のドアを勢いよく開け放った拍子に、
積もった雪が勢いよく吹き込んできた。
「おい。」
ルーサーの低い声が飛ぶが、
ランダルはお構いなしだ。
ばたばたとセバスチャンを引きずり、
ニョンとニェンも巻き込みながら、
一瞬で準備を整えた。
ニョンはおろおろと手袋をはめ、
ニェンは無言で帽子を目深にかぶり直す。
──私はソファから顔だけ出し、
ブランケットにくるまったまま、
その光景を眺めていた。
ランダルが、ちらりとこちらを見る。
「ねえ、見ててねー!」
それだけ言うと、
満面の笑みで、
雪の中へ飛び出していった。
セバスチャンも、ニョンも、ニェンも、
次々とその後に続く。
ドアの向こうで、
わあわあと賑やかな声が響き始めた。