• テキストサイズ

【♀夢主】あたらしいかぞく【ランフレン】

第9章 たべられたひ


の体が、すこしだけ沈んだ。
毛布の中で、ぬくもりがじんわりと広がっていく。



そっと、手を伸ばす。
いつものように、白い手袋をはめた指で、の髪に触れた。



しっとりと、やわらかい感触が、
布越しにじんわりと伝わってくる。



でも――物足りない。
今日は、もっとちゃんと感じたい。



ボクのプリンセスのこと、もっとちゃんと、わかりたい。



そっと手を引いて、手袋の裾を指先でつまむ。
しゅる、と音もなく、右手の手袋が外れた。



露わになった指先が、の髪を撫でる。
指に絡むやわらかな毛束、肌のぬくもり。



頬へ、首筋へ、指をすべらせていく。
少し冷えた指先が、眠るの体温にじわりと馴染んでいく。



「……あったかい」



息をのむように呟いて、
ボクはもう一度、額にやさしく唇を触れさせた。



それでもは、目を開けなかった。



拒まれない。嫌がられない。
ボクの手を、素肌を、ちゃんと受け止めてくれている。



――しあわせ。



ねぇ、。



やっぱりボクたちはもう、ちゃんと恋人でしょ?
まだ誰にも言ってないけど、もう決まってる。
ルーサー兄さんにも、きっとそのうちちゃんと言うからね。



お嫁さんにするって、ちゃんと宣言するから。



唇には、まだ触れない。
だってこれは、ちゃんとした恋だから。
大切にしたいから。



……でも、ボクだけのものになったってことは、
こうして、手で、肌で、毎晩確かめていいってことでしょ?



ボクはをぎゅっと抱きしめた。



毛布の下、腕の中におさまっているのぬくもりが、
とても静かで、やさしくて――



守ってあげたいって、自然と思えた。



その存在が、ただそこにあるだけでいとおしくて、
胸の奥が、じゅわっとあたたかく満たされていくのがわかった。



この棺の中が、ふたりだけの世界。



の鼓動を、胸に感じながら、
ボクはそっと目を閉じた。



蓋は、もう閉まってる。



ふたりだけの夜が、音もなく、完全に閉じていった。
/ 155ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp