第9章 きゅう
「なんていうか?」
「私の鶴丸国永は、こうなんだなぁって」
「………ふっ、」
「清光?」
「いいんじゃない、吹っ切れたと言うか。憧れに昇華したというか」
「憧れに昇華ね」
「うん」
「ねぇ、清光」
「何?」
「ちょっと出よっか。あの2人、白熱してるし」
「うん?デートのお誘い?」
「そう言うこと」
そっと道場を出る。
「甘味でも食べ行こう」
「やったね」
「安定も誘う?」
「いーよ、あいつ内番だし。お土産買えば」
「そ」
貴重品だけ持って、本丸を出る。
「ねぇ、清光」
「なに?」
「例えばさ、使っていた箸が折れるとするじゃない」
「うん」
「で、たまたま同じ柄の箸がまた売られていてそれを買ったとするでしょう」
「よっぽどお気に入りだ」
「うん。でもそれってさ。同じ柄で同じに見えても、やっぱり違うんだよね」
「まぁね」
「たとえ同じ木で作られていても」
「うん」
「そうだよねぇ」
「なんの話?」
「恋バナ?」
「わかんねぇ」
「ふっ」
「鶴丸の話?」
「察しのいい刀は嫌いだな」
「え?」
「うそ。清光のことは大好き」
「俺は愛してっけど」
「超えてきた」
「え」
「うそうそ。愛してる。…はぁー。なんていうか、海に行って叫びたい気分」
「主なんかキャラ変わった?」
「吹っ切れたっていってよ。なんか、憑き物が取れた気分。鶴丸が重傷で帰ってきた時、札はつかったけどあの一瞬必死で手入れしたの。本当は最後まで私が見たかったけど、フラフラで国広にバトンタッチするくらい。私、他のみんなでも多分同じようにする。絶対なってほしくないけど」
「うん」
「私にとってみんなは、家族であり恋人であり親友であり、とにかく全てなの。誰1人かけてほしくない、そっちが全てだった。
それに気づいたら、ちゃんと見てちゃんと守んなきゃって、思ったんだよね」
「へぇ」
「鶴丸に盲目的だった、ちゃんと自覚してる。でも、一旦それはお終い」
「できんの?」
「さぁ?清光が見ててよ、できるかどうか」
「初期刀じゃなくていいんだ?」
「国広には、初めに別のことお願いしてるから」
「なにそれ」
「秘密」
「私、鶴丸のとまり木になりたかったの。羽を休める場所になりたかった。なれなかったけど」