第5章 ご
人の想いなら、同じ種であることが嫌になる。
戦いに巻き込まれたモノたち、責任を負わされた神様達、犠牲やその代償が生半可な覚悟にのし掛かる。
手入れの最中、こぼれ落ちたのは汗か涙か。
ただ一言、息も絶え絶えに国広がその唇で奏でた音が耳に残る。
「…」
私の頬に、触れた手。
私を初めて撫でてくれた手。
「国広、国広!!絶対、絶対治すから。絶対、治すから!!」
神様、仏様、不純な動機でこの職についたこと、少しだけ後悔しています。
どうか、力を貸して。
国広を助けて。
…違う。
ちがう、そうじゃない。
助けるのはこの手で、私の力だ。
落ち着け、落ち着け。
できる、絶対できる。
祈るように力を込めれば、じんわりと国広の傷が塞がって行くのが見えた。
安心した。
同時に、なんて便利な力かと思った。
もしこの力が、あの時もあれば。
貴方に使えれば、そうしたら…。
「国広、起きて」
変なことばかり考えちゃうから。
できもしないタラレバに、胸が痛い。
「…っ、」
「くにひろ、」
「…い」
「え?」
「刀遣いか荒い」
「ごめん!どっかまだ痛む?ごめん、」
「落ち着け」
ぎゅっと、引き寄せられる。
「アンタが泣いていると、気が気じゃない」
「ごめん」
「アンタの手入れで、もうどこも痛くない。だから、泣かなくていい。ここへ来て、ずっとそんな顔しか見てない気がする」
「そんなことない」
「ある。…アンタ、きっと疲れているんだ」
視界が真っ暗になって、上からかかってきた布団に心臓が高鳴る。
「アンタも休め。俺も休む」
私を引き寄せたくせに、何事もなかったかのように背を向ける国広。
「国広」
「俺はもう寝た」
「何それ」
「…」
「チュートリアル終わってない」
「明日すればいい」
「今鍛刀してるんだけど」
そういうと、そっぽを向いているくせに器用に私の腕を掴んで寄せる。
「明日でいい。鍛刀にも時間がかかる。アンタは休め。俺を枕だと思えばいい」
末恐ろしいお刀様。
私の腕を離してくれないから、もういいやと諦めてその背に額をよせる。
国広が驚いていたのが、少しおかしかった。
バックハグ。
対して知識も経験もないのに、頭に過ぎった。