第5章 ご
時の政府の義務教育は、12年間。
初等部、中等部、高等部の三つ。
全部受講し終えた私は、18歳になった。
貴方のいない毎日はただつまらないだけで、過ぎて行ったわ。
勿体無いことをしていると、人生をただ消費していると、私自身分かっているわ。
いつまで言っているんだとか、未練たらしいとか、貴方も思うかしら?
想うことを辞められるのなら、私だってそうしたい。
学校に卒業があるように、私も貴方から卒業したいわ。
そろそろね。
でも、そんな簡単じゃないのよ。
それだけ私の中の貴方の存在が大きかったって事。
何度も確認するように思うの、貴方への気持ち。
「さん」
はて、この方はどなただったかしら?
「俺、隣のクラスの」
少し熱った顔色。
「あら、どうしたの?熱?大変よ、ちょっと失礼」
断りを入れてから、その隣のクラスだと言う男子生徒に触れる。
余計熱くなったみたい。
「保健室まで送って差し上げるわ。着いていらして?」
額から手を退けて、肩を貸そうとすると丁重に断られる。
「え、あ、…これはそう言うんじゃなくて」
「じゃあ、どう言うことかしら?」
「俺、さんのことがき、気になってて!」
「気になる?」
「つまり好きなんだ!」
「どうして?」
「え?」
「私のどこが好きなの?いつ好きになったの?どうして好きになったの?」
私は答えられるわ。
貴方に抱くこの感情の出どころ。
「それは」
言い淀んだ目の前の彼は、言葉を閉ざしてしまった。
「忘れてしまったのなら、それでいいわ。でも、ごめんなさい。私、貴方のこと知らないの。
お気持ちだけありがとう。私が聞いた答え、いつか思い出したら聞かせてくれると嬉しいわ。ごきげんよう」
軽く会釈をして、彼の脇を通り抜ける。
最近こんなことばかり。
深く考えもせず、惚れた腫れたを想いのままにぶつける。
その無邪気さが嫌な分ではないけれど、もう少し熟考してから伝えて欲しいものだわ。
そしたら、私が貴方へ持つ感情と比較ができるでしょう?
この想いがどのくらいの大きさで、どのくらいの重さで、どのくらいの歪さか。
…なんて、私も身勝手ね。
この身を得て、何度も繰り返した春。
それなのに一度も会えなかったわ。