第8章 ■少年期の共寝
最近ナタがよく眠れていないようだ。うなされる声がテントから聞こえる。ほぼ解決したものの色々なことがあったのだ。心の傷は癒えるまで時間がかかる。ましてナタ自身が望んだこととはいえ、年端もいかない少年が生まれ育った地を離れ、異国の大人たちと生活しているのだ。負担がないはずがない。喪った父を呼ぶ声も聞いた。自分は父親にはなれないが師匠だ。何かできることがあるはず。考えて数分で諦めてハンターはアルマたちに助けを求めに行った。
「ナタ、お茶を飲もう」
テントに入る前に声をかけるとナタは素直に頷いた。
「お湯は沸かしてあるんですね、じゃあいれますから」
「いや、自分がやる」
できるんですかという言葉をギリギリで飲み込んだのが見て取れた。ナタの気持ちはわかる。いつもお茶をいれるオトモがいないのだからナタがいれる他ない。
「大丈夫、練習した」
「練習……」
昼間のことを思い出しながらポッドに茶葉を入れお湯を注ぐ。ふわりと花の甘い匂いに目を細めつつ数を数える。要するにカウンター狙いと同じなのだ。初撃を入れて、正確な時間で次の動作に移る。茶葉とお湯の量が決まっていれば、ハンターにだってできる。
「ナタ」
感動した様子で、一度煮詰めたお茶を飲まされている少年はカップを受け取り礼を言った。
「いただきます……おいしい」
温かくて甘い液体で腹を満たす。第一クエストの入眠準備は成功だ。もっと言えば夕食もナタの好物だ。本人はハッキリと好き嫌いを言わないがハンターも見ていればわかる。ナタはまだ子どもなのだから。