第4章 当日
「好きな人に頼まれて断れる人なんていないと思いますよ?」
『ふふっ、じゃあ約束ね』
「ちなみにどうしてOKしてくれたんですか?」
『私恋愛に詳しくないんだけど、マネージャー…うちのお母さんに相談してたら、それが恋だよ〜みたいなこと言われたからそこからちょっとずつ意識し出した感じかな』
「マネージャーさんってお母さんだったんですか!?」
『うん、これは二人だけの秘密だったんだけど…。あ、ごめんお母さんから連絡来ちゃった。私もう行くけど約束、忘れないでね☆』
そう言って颯爽と去っていく後ろ姿は、
もう既に"澪"ではなく"luna"のような気がした。
さて、これからどうしようかな…
アニキや"プロデューサー"さんに報告…とは言っても今の状況じゃ進展してないも同じだし…
まぁ今は何もしなくていいか。聞かれたら答えよう。
「もしもし、"プロデューサー"さん?」
[あ、ゆうたくん今どこにいる?]
「どこってカフェですけど」
[そこに"luna"さんいる?]
「いえ、もう退店してますよ」
[そっか、なんか"luna"さんのマネージャーさんがゆうたくん個人の連絡先ほしいって言ってるんだけど…]
「あぁ、それたぶん"luna"さんが欲しがってるんだと思います」
[ゆうたくん、それってつまり…?]
「いえ、まだ"プロデューサー"さんが思っているようなことにはなっていませんよ。でもそういうことなので教えて大丈夫です」
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澪ちゃんとの約束からもう一年がたとうとしている。
あの日、"プロデューサー"さんが俺の連絡先を伝えてくれたのでそこから連絡を取り合うようになった。
澪ちゃんが言っていたように日本にいても会えることはなかったが
メッセージでのやり取りや通話などをよくしていたので俺たちはそれで満足だった。
そして、今日は澪ちゃんがワールドツアーを終えて帰国する。
そこからは当面の間、休養期間に入るようだ。
"プロデューサー"さんに頼み込んで仕事を調整してもらって、
俺は澪ちゃんを出迎えるために空港に来た。
先ほど飛行機が着陸するのが見えたのでゲートのほうへ向かう。