第18章 初めての買い物
中身が見えないような袋に入れてもらい、急いで部屋に戻る。そして荷物に隠す様に入れれば、三蔵の部屋に向かっていった。
コンコン
『誰だ』
その返事が聞こえて理世はそっと扉を開ける。
「…なんだ?」
「これ、カードありがと…」
「買えたのか?」
「ん!」
「言っておくが、明日、出発だからな?」
「…え?」
「なんだ、不満か?」
「ううん。そんなことない」
「…フン」
知ってか知らずか、三蔵にそれとなく注意された理世。それでもカードを手渡せばそっと受け取った三蔵に怒ってはなさそうだなと感じていた。
「…まだなんかあるのか?」
「特にない…けど…」
「けど?」
「……ありがと」
「なんの礼だ」
「ううん、わがまま聞いてくれて…」
「大したことじゃねぇ」
そうして理世は自身の部屋に向かっていった。
「お、帰ってたのか?」
「悟浄」
「ん?」
「今三蔵の部屋に行ってて…」
「あー、カード?」
「ん」
「んで?何買い忘れたわけ…?」
「買い忘れというか…その…」
「ん?」
「ちょっと…ほしくて…」
「ふーん、ま、いいんだけど…」
「…悟浄が…気に入るかわかんないなって思うけど」
「俺?」
そういうと座りなおして悟浄は理世の顔を覗き込むようにじっと見つめた。
「何?何かあった?」
「…今日、お風呂あがったら…見せようかなって…」
「何々?風呂上り?」
「ん…」
「んじゃ、楽しみにしてるわ」
そう話している二人。そんな距離に耐え切れなくなった理世はそっと悟浄に近づいた。
「…どうした?」
「あのね?」
「んー?」
するりと頬に触れる理世。そんな相手の腰に腕を回した悟浄はくいっと抱き寄せる。
「…なーに?理世チャン」
「…んーんなんでもない」
「なんでもねぇのにこうして来るの?」
「だって…」
「なんだよ」
さらりと指を滑らす緋色の髪。
「悟浄の髪、好きだなって…」
「はず…」
「恥ずかしくないよ…?」
「そりゃ理世は言ってる方だからよ」