第14章 触れない距離
「おっちゃん!!コレ!これとこれと!!」
「相変わらずの食欲だね」
「はは、多分理世にも食べさせたいんですよ。きっとね?」
「ありがたいね」
「そうだな」
「…おい」
「ん?私?」
「あぁ。」
「何?どうかした?三蔵」
「明日の朝には出発するからな」
「ん、ありがとう」
「礼なんざいらねぇよ」
ぶっきらぼうに答える三蔵はライターを探す。
「…おい」
「・・・・何?」
「ちげぇよ、お前じゃねぇ」
しかし他の誰も反応しない。
「…・・おい…!」
「んぁ?」
「なんですか?三蔵」
「てめぇだ、ライター…」
「俺?主語がねぇから分かんねぇよ。」
「…チ…」
「…ほらよ、百万円でーぇす」
「…うぜぇよ、駄菓子屋のオヤジか、てめぇは」
そう話しながらも煙草に火を点けた。
「…お待たせしました、こちらカニクリームコロッケ定食と、デミグラスハンバーグデラックスです。」
「ありがとーー!!」
「ありがとうございます。」
「つぅか、朝からなんでんなもん食えんだよ」
「それは思う…」
「お待たせいたしました。こちらハム卵サンドと、クリームリゾットです」
「はぁい、いただきます」
「はい、」
「お、オネーチャン、かわいいねぇ」
「えー?そうですか?ありがとうございます!」
「本っと、かわいいよ、モデルかと思っちゃったわ」
「違いますよぉ、」
そうナンパを繰り返す悟浄。それでも全くと言っていいほど気にしない理世。
「悟浄、恥ずかしい」
「んなことねぇよ?かわいい子にかわいいっていうのは当然だろ?」
「ほざけ、」
「…おんやぁ?素直に心の声に従えない三蔵サマ☆」
「ぁあ?喧嘩売ってんのか」
「べっつにぃ?」
「静かに食べたいよね、悟空」
「んー、でもこんなんじゃね?いつも」
「確かにね」
我関せず、な悟空と理世は一緒に食べているのだった。