第12章 愛撫の代償
二度、ノックをするものの、やはり中からの応答はない。
カチャリとキーを差し込んで開ければガチャっと軽くも解除の音がする。
「…どうぞ、」
そうしてフロントスタッフは入り口で待機をする。中に入る三蔵は時期に入り口に戻ってきた。
「…追加で頼みたいんだが」
「はい?」
そうして解熱剤をもらうことにして、一旦はフロントスタッフは戻っていった。三蔵は傍の椅子に腰かけ、そのままフロントスタッフを待つことにする。
「…たく、だから言ってんだ。飯を食えって…」
「…ン…」
顔は赤く、息も上がる。ふっと額に触れれば明らかに発熱をしている状況はわかった。
それからすぐにフロントのスタッフは戻ってきて解熱剤を三度分、持ってきた。
「…助かった、」
「いえ、お大事になさってください…」
そうして丁寧に一礼すればその場から去っていく。ベッド脇の棚に薬を置くとクン…っと法衣を引っ張られる感覚に陥った。よくよく見れば寝ぼけているのか、理世が三蔵の法衣の袖を握りしめていたのだ。
「…全く…」
椅子に戻るに戻れなくなり、ベッドの淵に座った。
「…ハァ…ここじゃ吸えねぇな…」
そっと手をほどけばするりと抜ける。立ち上がり起こさぬようにと理世の持っているキーを棚上から取り、隣の部屋を訪ねた。
「…ぁー?どうした、三蔵。」
「…・・」
「て、おい」
つかつかと中に入ると少し入ったところで壁にもたれた。
「…なんだよ、一体」
中に入ろうとした悟浄を阻む様にと足を出し、壁にどかりと行く手を阻む。
「…おい」
「てめぇの行く先はこっちじゃねぇ」
「ぁ?ここ俺の部屋だろうが」
「だろうな」
「…何が言いてぇ」
そう言われれば三蔵は部屋の鍵をチャリ…と差し出した。