第38章 寂しい心…
悟浄が…一行が街を離れていく…こんな風に一人になることは初めてだった。
「…ッ…」
沙烙に言われて、食事処の家族にも迎え入れられて…幸せになるはずだった。何も不自由はない暮らしになると…そう紗烙に聞かされた。…でも…食欲もわかなくて…心配してもまだ離れてから一時間位しかたってないのに…
「…理世…、おい、大丈夫か?」
「あ、沙烙…」
「私もそろそろ向こうに向かうが…大丈夫か?」
「ん、大丈夫!動いてた方がきっと気はまぎれるし!」
そう笑っていた。笑えているだろうか…そんな不安も心によぎる…だけど…そうも言っていられない…
「それじゃぁ…後は頼んだ」
「あいよ」
そうして沙烙も村を後にする。頻繁に来ることはない…ここまで直近で何日も来るのは三蔵達がいたからだと聞いて…
「よし、理世ちゃん、だっけ?行こうか?」
「あ、はい」
「私の事は詩氾(シーハン)って呼んでくれたら良いさ」
「詩氾さん…」
「堅苦しいのは無しだ!ほら、」
「詩…氾…ッッ」
「ん!よし!」
「俺の事は翔宇(シャンユー)でいい」
「はい、なら、私も理世でいいです」
「分かったよ。よろしく、理世」
「はい」
そうしてお世話になる二人の事を名前で呼ぶようになった。店に案内され、いろんな準備等も兼ねて話をする。
色々と教えてもらって、私も翌日から働くことになった。思っていたよりも忙しい店で、飲食店初めての私にしたら結構ハードルが高かった。
それでも皆解ってくれて…村の人たちの憩いの場とも化しているせいもあるのだろう。一気に村の人たちと打ち解けていった。