第35章 もう一人の三蔵

「三蔵様！！」
「おぉ！沙烙様…！」
「おー、こんな入り口で集まってどうし…、た…って…」
「これはこれは…」
「確かに三蔵だな」
「…そなたは…？」
「第三十一代唐亜玄奘三蔵法師、かくいうお前は？」
「第二十八代羅漢紗烙三蔵法師であるが…」
「すっげぇ…三蔵が二人…」
「偽物じゃないの？」
「誰が偽物だ！」
「ｸｽｸｽ…まぁまぁ…三蔵、落ち着いて…」
「ぁ？」
「…あ、そっか…どっちも三蔵か…」
「…てことは…沙烙さん？」
「うちのは玄ちゃん？」
「殺す…」

じゃかっと銃を取り出す三蔵。すぐさまぴたりと悟浄の額に突き付けた。

「…まぁまぁ、三蔵。…というか…三蔵法師の方々って組合とかあるんでしょうか？」
「ぶは…おもしれ！」
「欲しいならくれてやるが？」
「いや、要らね」

そんな話をしながらも広場に集まる。

「…で？そっちの経文は？」
「聖天・魔天の二つだ。」
「…でも見ると一つだが？」
「…奪われた…」
「なるほどな。私のは恒天経文だ。」
「…そうか…して、なんでこの村に？」
「私のいるのはこの山の上だ。でもな、恒天経文の力でこの一帯の集落と、まだ異変の影響を受けていない妖怪たちをかくまっている。」
「……三蔵…？」
「…ﾊｧ…」
「なんだ？どうかしたのか…？」

そう聞かれた三蔵。少し話がある…と言えば沙烙と一緒に場所を変えていった。波珊と悟浄は肩を隣り合わせにすればぼそりと話し出す。

「…なぁ、沙烙って…女なんだろ？」
「あぁ。そうだが？」
「気の強い女だな、」
「…でもかわいいところもある」
「…へぇ？惚れてんのね？」
「…ｯ！？」
「わっかりやす」
「そ、そういうお前たちの所にも女がいるだろ。恐らく玄奘のだろうが…」
「いんや、俺のだ」
「…は？」
「ん、マジ」

そう悟浄は笑っていた。