第33章 現れた刻印
ちらりと悟浄は時計を見る。
「理世?そろそろ行かねぇと」
「…ッッ」
「戻ったら…する?」
小さく、しかし少し低くなる悟浄の声に理世は小さく頷いた。
「…いくか?」
「…ん」
「クス…行きたくねぇって顔してんなよ」
「…だって…」
「何?」
「…ッッ」
「なぁによ」
「…悟浄…」
「ん?」
そこまで話しても何も言う事が出来ないままにぎゅっと首に巻き付いた理世を抱きかかえる様にして悟浄はよっと立ち上がった。
「…どうした、ん?」
「…降りる」
「下ろさねぇよ、理由言うまで」
「…一回だけ…その…」
「ん?」
「キス…してから行ってもいい?」
「…んな事かよ」
そう返事をすればゆっくりと下ろして顔を持ち上げ、背伸びする理世と合わせて腰をかがめればゆっくりと重なり合う唇。しかし直に離れた。
「…これ以上は後でな?」
「ん…」
「ほら、行くぞ?」
そう言って宥めるように手を引いて部屋を出る。そこでばったりと八戒と落ち合う事になった。
「…おや、時間より少し早いですが?」
「まぁな?」
「理世?」
「何?」
「…大丈夫ですか?」
「何が?」
「いえ、少し気になって…」
「大丈夫だよ!いこ!」
そう言ってパタパタと先に走っていく理世。悟空とも落ち合えば二人で話しながら歩いていく。そんな背中を見つめながら八戒は悟浄に問うた。
「…大丈夫ではないんじゃないですか?」
「…あぁ。」
「どんどん嘘が下手になってますね…理世」
「そうだよな…」
「…あなたは大丈夫ですか?」
「んぁ?俺は問題ねぇよ」
「そうですか」
そうして二人揃って宿前に着いた。しかし時間少し早い事もあったためか三蔵はまだ来ていない。
「…三蔵遅いね」
「ほんとに…」
しかし時間ぴったりに姿を現すのだった。