第32章 迷いと道

「お前が悟浄に思いを寄せていても、その逆もあったとしても、だ。そのうち理世、お前は正直足手まといになる。」
「…ｯｯ」
「考えてもみろ。お前は俺と同じただの『人間』だ。妖怪でも何か特別な力があるわけでもねぇ。」
「…ん」
「今すぐにどうこうじゃねぇよ。ただ、いつかは俺たちと別れてもらう事も必要になる。」
「……ｯｯそう、だよね…」
「もう少し言い方ってものがあるんじゃねぇの？」
「じゃぁ回りくどく言うか？それでもしこいつが勘違いしたら？まだまだ一緒に居られるって思いだしたら？てめぇはその後始末出来るってのか？」
「…それは…」
「出来ねぇんだろうが。なら言わなきゃいけねぇ時に言うのが一番だろうが」
「…解った…」
「…理世」
「ねぇ三蔵…」
「なんだ」
「まだ、すぐじゃなくてもいいって言ったよね…」
「あぁ。連れて歩く責任は取る。安全じゃねぇところに放り出したりはしねぇよ」
「…なら…その場所が見つかるまでは…一緒に居てもいい…？」
「あぁ。そう言ってるだろうが」
「…解った…ありがと…」

そう言って三蔵に笑いかけた。

「…冷えるからな…そのバカからでも暖取らせてもらえ」
「…ん、そうする…」

そう答えて悟浄の腕に巻き付けば小さく『お休み』と伝えた。そこから理世が眠りにつくまでにそれほど時間は要さなかった。小さな寝息を確認した悟浄は三蔵に声をかける。

「…三蔵」
「てめぇの話は聞く気がねぇ」
「…そうじゃねぇよ…」
「なんだ」

そう続ける悟浄の話を八戒も視線を混じらせて聞き始めた。