第30章 花贈~hana okuri~
「すみません、三蔵は解るのですが…巫女っていうのは…?」
そう八戒が切り出した時だ。
「そこにいらっしゃいますじゃないですか!」
そう指示したのは他の誰でもなく理世の事だった。
「わ、たし?巫女じゃないんだけど…」
「素性を隠したがるのも解りますとも…!三蔵法師様に加えて巫女様も一緒であるとなれば諸々から狙われかねないでしょうし…しかし、この街では大丈夫です!丁重におもてなしさせていただきます故…!」
「あの、それから…」
「お話はあとでごゆっくり…!まずはどうぞ、こちらへ!」
誘われるままに恐らくこの街の長だろう男の後に着いて行った一行。家について話を聞けば、三蔵と巫女が従者を連れてやってきたとき、街に繫栄と光がともされる。その言い伝えがあるという。
「…悪いがその言い伝えはでまかせだろう」
「しかし!」
「すまないが俺らにそんな力はない。確かに三蔵ではあるが、繁栄と光とやらは関係ない」
そう言い放つ三蔵の言葉に愕然とする長。しかしながら、沸きだった街の様子を見て長も引くに引けなかった。
「…でしたら、真似事でも結構でございます。どうか…街の民の為に…花贈を行ってはいただけませんでしょうか?」
「花贈、だと?」
「はい…」
「すみません、それってどういうものでしょうか?」
八戒の質問に長はゆっくりと、しかし丁寧に話し出した。
「…ーーーつまりは、正装した三蔵が、高車と言われる飾られた花車に、理世と一緒に乗って街を練りまわり、その夜、寝所をともにして祈る。と言う事でしょうか?」
「はい!その通りでございます。」
「くだらん」
その一言を発した三蔵。しかしもう一人気が気じゃない人物がいた。そう…・・悟浄だった。