第29章 ハジメテの感覚
そして2日後のその街も出発の日の朝食。理世はカラン…っと食器を下に落としていた。
「…どうかしましたか?」
「だって…今初めて知った…」
「んぁ?あー、確かに俺話してなかったか?」
「聞いてない…」
「減るもんでもねぇんだ。」
「三蔵!そういう問題じゃないの!お祝い…できないじゃん…」
そう、数分前に聞いたのは今日が悟浄の誕生日だと言う事だった。
「…減るっていうか、どっちかって言ったら増える方ですもんね」
「そういう問題じゃない…八戒…」
「でも間違っていないとは思うのですが…」
「年齢の問題じゃないのよ…」
「ま、誕生日だからなんだってわけでもねぇしよ?」
「本人もそう言ってる」
「…でも…当日にお祝い出来ないのは…寂しくない?」
「お前の考えなだけだろ」
「…そうなんだけど…」
俯き加減に半ばいじけモードになっている理世を見て三蔵は盛大に、解りやすいほどに大きくため息を吐いた。
「…たく…今回だけだからな?」
「…え?」
「明日に伸ばしてやるって言ってんだ。」
「…何を?」
「ぁあ?」
「理世、出発を明日に伸ばすからゆっくりと誕生日をお祝いしてあげたらどうだって事ですよ」
「…うそ…いいの?!三蔵!!」
「うるせぇ。今回だけだっつってんだろ。解ったな?」
「…お優しい事。」
「今すぐ出発するか?」
「いえ、滅相もございません」
こうして当初の二泊から三泊に急遽変更した三蔵。呆れながらも理世の顔を見つめながらも三蔵は煙草に火を点けていた。部屋に戻った理世と悟浄。部屋に入るなり理世は悟浄の背中に巻き付いた。