第4章 襲撃、守る腕
「…そういや、」
それぞれの部屋に戻っていけば当然の様に悟浄と理世が同じ部屋になる。
「…悪かったな、俺と一緒で」
「別に…大丈夫…」
「その大丈夫の基準が妖怪と比べられてんだろうねぇ…きっと…もし何なら俺出てくるけど…」
それでも返答がないままに理世はきゅっと手を握りしめていた。それを『否』ととった悟浄は小さくため息をついて下ろしたばかりの腰を上げた。
「…悟浄?」
「やっぱ俺、他行ってくるわ。もし八戒達に聞かれたら答えといて?」
ひらひらと手を振って背中を向け、もうじき扉に手が届くといった時だ。
「…まって…」
聞こえるかどうかの小さな声と共に、悟浄の背中にトン…っともたれるように巻き付いた理世。
「…理世?」
「…一緒に…いてほしい…」
「ん、わかった」
そうして悟浄は伸ばしかけた手をゆっくりとひっこめた。そのまま前に回る理世の手に自身の手を重ねればゆっくりと離す悟浄。体の向きを変えれば正面から抱きしめた。
「まだ、怖い?」
「…怖く…ないんだけど…」
「けど?」
「一人でいた時にまた妖怪…さっきみたいなの来たら…やだ」
「もう恐らく今日は来ねぇよ」
「…なんで解るの…?」
「んー、カン?」
「…カンって…」
「それに、もし俺いなくても隣から飛んでくるだろ、八戒と悟空が…」
「…あ、そっか…」
「…で?俺を引き留めたのはさっきの礼でもしてくれるってか?」
「…お礼って…でも、私…何も持ってないし…お金とか…」
「あー、いらね、そういうの」
「…え、でも…」
「どうせなら…」
クイっと顎を持ち上げれば視線を交わらせる悟浄。そのままじっと見つめればすっと顔が少しだけ近づく。
「…ベッドの上でのお礼がいいんだけど?」
「…ば…ッッ…!」
「クスクス…冗談だよ。」
そう笑い飛ばせばすっと手を放す。そのままベッドに座ればカチッと煙草に火をつけた。