第24章 金色の温もり
そうして三蔵の緩む口元に合わせて、右手はローブの上からゆるりと胸元に移動してくる。
「…さ、んぞ…」
「なんだ…」
顔を見られたくなくて手で隠すものの、その手はいともあっけなく取り払われる。そのまま手を壁に固定したままに三蔵はもう一度唇を重ねる。そうは言っても舌が入り込むことはなく、ただいつでも入り込めそうなくらいに深く、時折唇を甘噛みしながらも重ね合っている。
「…ン…」
息つく間も無いままに離れては何度も角度を変えて塞がれることに理世もくらりとし始めてきた。
「ン…さん…」
「どうした…」
ようやく空いた隙間で相手の名前を呼べば小さく返される。壁に押さえつけられた手はいつの間にか指を絡め合い、握りしめている。空いているもう片方の手で理世は三蔵の肩に触れようとした時だった。
ピーピーピー…・・・
シューターが鳴り、ランプが点滅する。その音でぴたりと二人の動きは止まり、三蔵は何もなかったかの様に上からどいていく。
「…出来たな…」
服を確認し、理世の分を渡せば自身も背中を向けて着替えを始める三蔵。
「…ッッ…あ、りがと…」
ありきたりな礼を言うしかできなかった理世だったものの、また背中を向けて着替えを始める。着替え終わればそのままチェックアウトをしてホテルを後にした。
「…雨、ほとんどやんだね…」
「だな」
「……あの、三蔵?」
「なんだ」
しかしそこから何を聞くでも手を繋ぐでもないその距離感のまま、二人は三人の待つ宿屋に戻っていった。
「…おっせぇよ!」
「ごめ、雨宿りしてた…」
「あーぁあ、濡れて…・・ん?」
すれ違う二人から同じ香りがすることに気づいたのは悟浄だった。