第20章 気付いた恋心
そして翌日、何もなかったかのように五人で朝食を摂り、出発する。それから二日後に新しい街に着き、二日滞在、すぐに出発…そんなことが二度ほど繰り返されたものの、その間、大部屋が運よくとれたこともあり、理世が悟浄と肌を重ねることはほぼ皆無だった。そんなある日の宿で…
コンコン…
『誰だ』
相変わらずの三蔵の返事に理世はゆっくりと扉を開ける。
「…あのね…三蔵」
「なんだ」
「今いい?」
「いいも悪いも入ってんだろうが…」
「それもそうなんだけど…」
「八戒達と外に行ったんじゃねぇのか?」
「行かなかった…」
「めずらしいじゃねぇか」
「……三蔵に相談があって…」
「…」
無言のままに三蔵は読んでいた新聞を畳み、眼鏡をはずす。
「…なんだ」
「あのね?ごじょ『却下』…まだ何も言ってない」
「あいつとの事は好きにしろと言ったが?」
「そうじゃなくて…」
キュッと手を握りしめた理世。ため息を一つ吐けば三蔵は座れと促してくる。
「…ありがと…」
「んで?あいつと何かあったのか?」
「…聞いてくれるの?」
「んな顔されちゃ、な。聞くだけだぞ?」
「…ん」
そうして一つ深呼吸すれば理世は三蔵の顔を見つめた。
「…あのね?私…悟浄の事好き…で」
「ぁあ?」
「…それで…その…」
「好きだ嫌いだは俺の知った事じゃねぇ」
「…ん、そうなんだけど…」
「それで?何が気にかかってんだ」
「……あの…悟浄は、その、愛だとか恋だとか…そういうのはいらないみたいで、それはもう聞いてたの。で、愛に溺れる気もないって…」
「それで?」
「でも、私は好きになっちゃった。だから、体だけの関係はやめないとって…そう思ってて」
「で、なんでそれを俺に言うんだ。」
「それでいいのかなって…」
「ふざけんな」