第1章 社畜OL
「よっしゃぁ、乗り切ったぁぁ!!」
「どうする?今から飲み行くやつ!」
そう言って社内は花金に包まれている。
「ほら!工藤も行くだろ?」
「行きません」
「はぁ?マジ?」
「はい、もう少しだけここ、詰めておきたいので」
「本っと社畜だなぁ…」
「どうとでも」
理世は所謂イケメンと言われる同僚たちの誘いも断りを入れた。『じゃぁまたな!』と言われるもの、返事をするだけの理世だったものの、その後去り際に同僚たちはつぶやいている。
「残業大好きとか、女じゃねぇ…」
「それなぁ!」
「見た目も問題ねぇのに、社畜を彼女には出来ねぇだろ」
「会社以下って言われてんのと一緒だしな…」
「それな」
そう話している同僚たちに視線を送ることもないままに理世は小さくため息をついた。
「聞こえてるっての…」
しかし、一つ深呼吸すればそのまま再度パソコンに向かう。なんだかんだといっても社畜とうたわれる代名詞をつけれれば、面倒くさい付き合いにならずに済む、と思っていた。
加えて仕事ができれば昇進もできる。給料も上がる、結果自身の生活が潤う…そう思っていたのだ。
「…これ乗り切れば…明日には…推しのライブ…」
そう、社畜といっても理世に楽しみがないというわけでもない。いう所の、声優業界の推しだった。
「…一年…頑張ったんだから…明日くらいは推しとの時間を…!!」
しかしそんなことを思いながらも突如襲ってきた眠気…理世は何とかしてこらえるものの、この日は珍しくも抗えなくなっていた。
「まだ、会社なのに…・・・ここで…・・寝る訳には…」
そう思っていた。しかし、いつしか意識は遠のいていくのだった。