第7章 ending
…
目を覚ますと、そこはスノーフルの裏道だった。
冷たい空気。薄く積もる雪。
どこかで鳴く犬の声。
サンズは、空を見上げていた。
「……今日は、静かだな」
となりにいたはずの何かが、いない。
そのことに疑問はない。だがなぜか、落ち着かない。
パピルスが声をかけてくる。
「サーーンズ!朝食を作ったぞーー!」
「……ああ。今行くよ」
軽く手を上げて返事をする。
笑顔もいつも通り。でも、“何かが足りない”感覚が胸に残る。
グリルビーズは静かだった。
アルフィーは研究所にこもって漫画を書いている。
解離性健忘症の罹患。アルフィーはサンズを見て、言い淀みながらその可能性を告げた。
アズゴアは庭に水を撒いていた。
世界は、平和だった。
誰もループを知らない。
誰も“あの子”のことを知らない。
でも、空気が薄く染まっている。
「よう、グリルビー。ここ、いつからこんなに静かだったっけ?」
「……変わっていない。サンズ」
そう言われても、納得できない。
何かが変わったはずだ。
何かが、なくなった。
でもそれが“思い出せない”。
「なあ……オレって、最近まで何してたっけ?」
誰に問うわけでもなく、サンズは空に問いかけた。
誰も答えない。誰も、知らない。
だけど――ほんの一瞬。
雪の上に、小さな足跡が一列、残されていた。
風が吹く。
それを、白くかき消していく。
PRAYERのいない、最初の1ページ目がめくられた。