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VS.Sans

第1章 1



「よぉ、ちびっこ。朝から殺気たっぷりってのは、オイラ的にはカフェインより効くな」

サンズが片手を上げ、軽く挨拶した。
その手の先には、すでに骨が浮いている。
重力魔法の圧が、空気にじわじわとしみ出していく。

「サンズ……どうして、戦うの?」
「んー。理由はざっくり三つくらいあるけど、どれも大したもんじゃないんだよな」

骨の雨がPRAYERに向かって降る。
踏み込み、ジャンプ、ギリギリで躱す。
それすら、サンズは予測済み。

「一つ、ここらで終わらせるには誰かが止めなきゃならない。
二つ、オイラって実は真面目でさ。やるって決めたら、ちゃんと仕事はこなすんだ」

サンズの笑顔が、少しだけ鋭くなる。

「三つ……なんか最近、アンタの顔見てるとムズムズするんだ。
初対面なのに、やたら腹立つっていうか……そういうの、あるよな? うん、あるある」

PRAYERがソウルを赤に変えて突進する。
サンズは片足を軽く動かすだけでタイミングをずらし魔法のプラットフォームをねじ込んだ。

「おっと、おっと。そんなに急いでどこ行くの? もしかして、オイラに会いたくて走ってんの?」

骨の壁。重力反転。ターゲットサークルの集中爆撃。
どれも手加減はないが、殺意もない。
ただ機械的に戦闘に勝つことだけに集中している。

「別にアンタを嫌いってわけじゃないんだ。
ただ、今ここでアンタに休んでもらえば、世界がちょっとはマシになるってだけさ」

PRAYERの攻撃が当たりかけた瞬間サンズが瞬間移動する。

「惜しい惜しい。けっこう動きいいじゃん。オイラ、実はその手の努力家タイプ、嫌いじゃないよ」

だが、その声色は空っぽな響き。
冗談を並べながらサンズは一切の情を感じさせない。
まるで、何かを感じる回路がぽっかり抜けているように。

「……ねえ、サンズ。記憶、失ってない?」
「えー? なにそれ、オイラってポンコツ扱いされるほど年いってないんだけどな」

「リセット、リセット、リセット。
終わんねー日々にゃ飽き飽きだ。そろそろこの茶番、閉幕ってやつだろ?」

最後の魔法陣が、PRAYERの足元に展開する。
赤いソウルが引きずられ、動きが鈍る。

「おやすみ、ちびっこ。オイラ、アンタが寝てるあいだに世界をお掃除しとくからさ」
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