第12章 scene11…癒し
そう、高熱も高熱…たかが風邪と言うにも高すぎるほどだ。
「……菩薩…ごめんね?」
そう言うと服を脱ぎ、雅は菩薩のベッドに潜り込む。
「…菩薩…許してね?」
「……」
返事の無い相手の胸元に顔を埋めながらきゅっと抱き締めた。熱い体…少しでも良くなるようにと祈りながらも少し上に上体を上げると額に唇を寄せる。
「……ン…」
その後にはそっと唇を重ね、ふぅっと息を吹き込んだ。大分治癒能力も力を増してきていた為、めまいを起こすことも無かった。
「……大丈夫かな…」
そのまま再度抱いて菩薩の体から熱を吸い上げるかのように祈り続けた雅。
ベッドに入ってから二時間ほどした時だ。菩薩は目を覚ました。
「…ン……雅…か?」
「…あ…菩薩、起きた?」
「…なんだ…これ…」
「怒るのなしね?」
「…ちょっと待て…もしかして…」
「ん、熱下げるだけ…ね?」
「……」
「ずいぶん前なのか…ちょっと前なのか……誰だったかにもこうして癒した事あって……あ、熱…測ってみて?」
そう言うと体温計を渡す。直に鳴ると平熱までは行かなくとも平熱に近い微熱程に下がっていた。
「良かった…熱下がってる…」
「おい…」
「…ん?なに?」
「ありがとうな」
「……ん、お薬飲んでも下がらないし…菩薩しんどそうだし……」
「お陰で動けるようになったわ」
「…そう?ならよか…ッ」
ベッドの縁に座る雅を後ろから腰を抱いて離そうとしなかった菩薩。