第10章 本当は
数秒の沈黙が2人の間に流れる。
そしてその沈黙を破ったのは杉山だった。
「流石、隼人先輩ですね」
優しく笑む杉山。
「何故だ」
低く、重たい声を発する。
それを聞いた杉山は、今度は寂しそうな笑顔を見せた。
「どうしても、隼人先輩を僕のモノにしたかったんです。後から出てきた三好先輩なんかに、取られたくなかった。無理矢理誘拐して、他の男と体の関係を持ってもらえれば、隼人先輩も諦めるかなと思ったんですけど…」
杉山は自嘲的に笑い、天井を見上げる。
「やっぱり、ダメ…でしたね」
そんな彼を見て、野木は申し訳なさそうに目を瞑った。
「多分俺は、どんなことがあろうとも、貴夜を好きでい続けると思う。それだけ、本気になれたんだ。そのせいで、お前のこと傷つけたよな。ごめん…」
「謝らないでください。余計に惨めになります」
杉山は貴夜に視線を移し、涙を流し、笑った。
「幸せになってくださいね」