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ツンデレ王子と腹黒王子

第10章 本当は


嘘、やだ。

誰か、誰か、誰か!

助けて。

助けて、野木…。


「おーい、そこの人」


声が聞こえ、男は俺から体を離し顔だけを背後に向けた。


「何だお前」


本当に野木が立っていた。

あぁいつも、俺が呼んだら来てくれる。

嬉しくて、涙が出た。


「お前、何してんの」

「見れば分かるだろ、愛を語り合ってる」


キモい…。

いつ何処で、俺がお前と語り合ったと言うんだ。


「お前に言ってない。俺は貴夜に言ってるんだ」

「え…?」


俺に…?

野木は俺たちに近づき、未だにくっついている男を引き剥がし後ろに放り投げる。


「いって…!何しやがんだてめぇ!」


男が背後から襲いかかった。

だが野木は軽く返り討ちに。

男は怯えて何処かへ逃げて行った。

それを見送ったあと、野木は俺へと向き直る。


「お前って本当、学習能力ないな。襲われるとか思わなかったのか?」

「そ、そんなの思うわけないだろ」


俺はうつ向き、なるべく野木の顔を見ないようにした。

頭上からため息が聞こえる。


「もっと警戒心持てよ。自分がどんな奴か把握しろ」

「はぁ?何言ってんだよ。もういい、どけ」


俺は野木を押し退け一歩踏み出した。


「っ!?」


だが視界が歪み、バランスを崩す。


「あ、おい!?」


野木の腕に抱き止められたのが分かった。

だがそこで、俺の意識が途切れた。





「おい貴夜、しっかりしろ」


そう呼びかけるが返事はない。

どうやら眠ってしまっているようだ。

今日1日、眠そうにしていた貴夜を思い出す。

野木はふっと笑い、貴夜の髪に触れた。


「隼人先輩」


目を向けると、杉山が立っていた。


「いつもの場所に来ないから、心配して探しに来たんです」


杉山の言葉に野木は視線を貴夜に落とす。

そしてうつ向いたまま呟いた。


「なぁ、晴」

「はい?」


顔を上げ、真っ直ぐ杉山を見据える。


「貴夜の誘拐を指示したのも、襲うように言ったのも、お前だよな、晴」
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